大切なことを理解する瞬間 『夏の庭』 小説紹介
ブログなんてすぐに飽きるだろうと思っていたんですけが、案外続くもんですね。
ちょっと今まで何を書いてきたのかを見直したんですけど、ちょっと固すぎたなぁと思いまして、もうちょっとゆるく、そして自分らしく書いていこうと思います。
今日、紹介する小説は、湯本香樹実さんの作品、『夏の庭』。
町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ―。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが…。喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。
内容(「BOOK」データベースより)
やっぱり子供って無邪気で何に対しても好奇心が強いが故に、ものすごく残酷ですよね。
まぁ、それは仕方がないことなんですけどね。
小さい頃は、自分とはどういう人間なんかわからないです。
他人のことを考えろと言われても、怒られるかどうかで物事を判断してしまいます。
でも、そんな子供もいつの日か理解するときがきます。
怒られるとかではなくて、何をしたら喜ばれるのか嫌がられるのかを知るときがきます。
そんな成長する過程に着目したのが『夏の庭』です。
最初の方が苦笑いしちゃうくらい残酷。
興味本位で、知りもしない老人の死に際をみてやろうって、
20を超えた大人が言ったら、
間違いなくやばいやつ認定されます(笑)。
子供だから許される話わけであって、
大人が何も考えずに、そんなことを言わないですよね。
子供は自分たちが知らないことは、すべて興味の対象。
その興味の対象に選ばれてしまったのが、一人暮らしをしているおじいさんだったんですよ。
最初は残酷だった彼らも次第に気づくのです。
何が大切なのか、そして『死』はどういうものなのか。
人が何かを理解するというのは、
誰かに強制されて理解するのではなく、
自らの意思で何か大切なことに触れた瞬間に、はじめて理解することなんだと思いました。
子供や孫がいる方は、お子さんに読んでもらってください。
何かを得ることができると思います。
でも、強制はしないであげてください。
リビングのソファとか、テーブルの上とかにさりげなく置いてみてください。
自分の意思で読むことで、本というものを好きなってくれる思います。
それでは、また。
あなた、騙されてない? 『影響力の武器』 本紹介
どうも春太です。
たまには小説以外の本も紹介してみようかなと思ったので、
今日は『影響力の武器』という本を紹介していこうと思います。
最初と後半しか読んでいないんだけど、
おもしろいし、かなりためになる本。
目から鱗とはこういうことかと分かるくらい、
ためになる本です(笑)。
参加者は一生懸命になってどちらがより有力なボスであるかを判断しようとしました。いずれか一人をその場の権威者と見定めてその人物に従うというやり方もうまくいかないのがわかると、どの参加者も最終的には自分の本能従って、電気ショックを与えるのをやめました。
『影響力の武器』 第6章より引用
この実験を簡単に説明すると、実験者が権威者の指示に従って他人に電気ショックを与えるかどうかっていう実験。
人は無意識に誰が権力を持っているかを考えるですよね。
権威者が誰であるかを知ると、どんな無理難題を押し付けられても実験を実行してしまうんです。
これは日常でもおこっていることで、上司の命令というだけで従ってしまう。
頭で考えれば間違っている命令だと判断することができるんだけど、
権威者の前ではそういう思考がなくなってしまうわけですよ。
だから詐欺師は自分が権威者であるかのように見せるため、
警察官の格好などをするんです。
ここで重要なのは、
・日常生活の中で無意識に権威者を定めないようにすること
・どんな状況でもまず自分の頭で考えること
・上司からの命令は正しいのかを考えること
意識付けをすることが大事です。
でも、そう簡単に自分を変えるって難しいですよね。
っていうことで、今までそのようなことが起きていないかを考えてみました。
考えて見ると、
大学時代の教授を思い出しました。
私が属していた研究室は、実験以外でも白衣を着用するというルールがあったんですよ。
実験で白衣を着用するのは当たり前なんですが、
それ以外も白衣を着用しなければならない。
研究室配属時に、なぜ実験以外の時も白衣を着なければならないのかという説明がされると思っていたのですが、その説明はされませんでした。
研究室のルールとして守らなければならない。
『ルールなんだから従わなければいけない』
私たちはそう思うことで、この問題を解決しました。
でもね、実験以外でも白衣を着るってかなりつらいんですよ。
研究室宛の荷物が事務に届いたときも、
講義のTA(教授の講義のお手伝い)のときも白衣を着なければならない。
研究室外の友達からは、
宗教みたい
白い巨塔じゃん
ってからかわれるんですよ。
別に好きでやっているわけではないのに・・・。
もう苦笑いするしかないです。
てな感じで、なぜ実験以外でも白衣を身につけなければならないのかという疑問を解決できないまま、私は大学を去りました。
でもね、ようやく疑問が解決できましたよ。
影響力の武器から考えると、
教授は権威を示そうとしていたのではないか。
教授や学生に、ちゃんとした研究室であるということを示そうとしたのではないか。
学内での評判をあげ、
来年は入ってくる学生の質をあげようとしたのではないか。
と思うわけですよ。
医学ではなくて、ただの理系なのにそこまでするのかと思うと少し怖いです。
本当に教授が白衣を利用して権威を示そうとしていたのならば、
もう、さすがっすとしか言えない。
まぁ、学生間では嘲笑の対象でしかなかったんですけどね。
どんまい、教授。
本当は別の意味があったのかもしれません。
研究室の一員であるという自覚を持たせるためとか、
白衣は私服になる可能性を秘めている(笑)ことを教えるためとか、
誰もが驚く素敵な理由があったのかもしれません。
今となってはね、もう真実を知ることができないですけど・・・。
このように自分の過去を思い出すってすごい大事だと思うんです。
教授がヤベーやつって言いたいわけではないんですよ。
周りを見渡せば、権威というものを巧みに使っているやつがいるということです。
本を読むだけではなくて、自分の体験と関連づけることで、
巧みに隠された罠を見つけることができるようになるということです。
私たちの生活にはたくさんの罠が存在します。
知らないうちに騙され、損してしまう。
そんな無抵抗な私たちに武器をくれるのが
この『影響力の武器』という本だと思っています。
興味がある方は、一度読んで見てください。
※値段が高いので図書館で借りることをお勧めします。
それでは、また。
僕だけのファインダー 『東京公園』 小説紹介
ファインダー(Finder)とは、カメラにおいて撮影前に目で構図を決めたりピントを合わせたりするのに使用する覗き窓
要は、ファインダーとは自分が撮影しようとしているものが、ちゃんと撮れるかを確認するためのものである。
よく、小説や歌など様々な場面でファインダーという言葉を見かける。
「ファイダーを通して、自分だけの景色を撮る」
「ファインダー越しの君を撮る」
まぁ、この文は今適当に考えたが、どうやらファインダーという言葉には確認するという意味だけではなく、違う意味もあるのではないかと私は思う。
例えば、雑誌に掲載されている写真やプロが撮影した写真を見ると、表すことができない感動を味わうことがある。
それは、撮影した人の技術や経験というものが成し得る技なのかもしれない。
でもそれだけではないと感じるのだ。
もし、それだけだとしたら、違うものを撮影しているのにどこか同じものになってしまう。そこら中、陳腐なもので溢れかえってしまうだろう。
では、何が感動をもたらすのだろうか。
それぞれが持っている感性というファインダーがもたらしているのでないか。
撮影したいものをファインダー越しに見たとき、その人だけの感性をファインダーに移し込んでいるのだ。
だから、ファインダーには確認の意味だけでなく、その人だけが大事にしていること、という意味を付け加えてたい。
なぜ、ファインダーの話なのか、
それは、小路幸也さんの作品、『東京公園』を読んでファインダーに興味を持ったからである。
写真家をめざす大学生の圭司は、公園で偶然に出会った男性から、奇妙な依頼を受ける―「妻の百合香を尾行して写真を撮ってほしい」。砧公園、世田谷公園、和田堀公園、井の頭公園…幼い娘を連れて、都内の公園をめぐる百合香を、カメラ越しに見つめる圭司は、いつしか彼女に惹かれていくが。憧れが恋へと成長する直前の、せつなくてもどかしい気持ちを、8つの公園を舞台に描いた、瑞々しい青春小説。
内容(「BOOK」データベースより)
小さな命がゆっくりと芽吹くように、物語は進んで行く。
そんな中でも、葛藤や後悔がある。
それを受け入れながら、圭司はファインダー越しの景色を撮る。
いやぁ、本当に綺麗な世界。
自分だけのファインダーを持った圭司を見ると、
カメラが欲しくなります。
暖かな日差しの中で、読んでほしい本です。
それでは、また。
辻村深月さんの作品を読んで見たいけど、どれから読めばいいのって話
どうも、春太です。
いろんな方の小説紹介ブログを見ていると、必ず一冊は見かける辻村深月さんの本。
面白そうだから、読んでみようと本屋に買いに行くと、
種類の多さにびっくりしてしまう。
よく見ると、この順番で読めば、辻村ワールドがより楽しめると書かれた帯を発見する。
でも、自分が読みたいのは後半にある本・・・。
っていうことはありませんか。
そこで、今日は辻村深月さんの本を一通り読んだ私が、おすすめする順番をいくつか紹介していきたいと思います。
①
凍りのくじら
↓
子供たちは夜と遊ぶ(ぼくのメジャースプーンを先に読んでもいい)
↓
ぼくのメジャースプーン
↓
名前探しの放課後
②
スロウハイツの神様(冷たい校舎の時は止まるを先に読んでもいい)
↓
冷たい校舎の時は止まる
↓
↓
光待つ場所へ
この順番が正解とは限りませんが、この順番なら物語のつながりを肌で感じることができます。
本音を言えば、帯通り
凍りのくじら
↓
↓
冷たい校舎の時は止まる
↓
子供たちは夜と遊ぶ
↓
ぼくのメジャースプーン
↓
名前探しの放課後
↓
↓
光待つ場所へ
の順番で読むのが一番だと思います。
後半の方にある本を読みたいとか、
たくさんの本を読むのは難しいという方におすすめです。
また、この順番を知らずに後半の方を読んでしまったという人もいるかもしれません。
心配する必要はありません。
多少の前後関係はずれるかもしれないですが、
違う物語に、自分の好きな登場人物が出たときの感動を得ることができます。
自分の知り得た物語に新たな情報が加わって進化する辻村ワールド。
あなただけの読み方を見つけてみてはいかがでしょうか。
補足ですが、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』はどのタイミングで読んでもいいと思います。
今から過去記事のリンクを張りますが、量が多いので時間に余裕がある方だけ見てください(笑)。
それでは、また。
池井戸潤 『下町ロケット』 小説紹介
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた―。男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編!第145回直木賞受賞作。
内容(「BOOK」データベースより)
俺には夢がある。
心が踊るように、そしてワクワクするような夢がある。
どんな逆境が来ようと、俺は負けない。
なぜならば、好きなんだ。
ただ、好きなんだ。
この二文字の言葉の意味を知っているから、
俺は何度だって立ち上がる。
ロケットが好きという熱意を持ち続けた男、
佃航平はロケット研究の最先端にいることができなくなっても、
必死に夢を追い続ける物語。
この物語は、この言葉に限る。
『カッコイイ』。
主人公の佃航平は本当にかっこいい。
親の工場を受け継いだおじさんなのにかっこいいのだ。
夢を信じ、己を信じ、仲間を信じる。
どんなに転んでも立ち上がる。
全身全霊をかけて、ひたすら走る。
そんな彼がたどり着く先に待ち受けるものは何なのか、
その目で確かめていただきたい。
今日紹介した物語のテーマは『夢を追い続ける人』。
自分の夢が本当に叶えたい夢なのかどうか再確認することができる。
今一度、夢を再確認したい人におすすめです。
それでは、また。
やっと見つけた 『光待つ場所へ』 小説紹介
どうも春太です。
二日連続、辻村深月さんの作品紹介。
『光待つ場所へ』という作品。
大学二年の春。清水あやめには自信があった。世界を見るには感性という武器がいる。自分にはそれがある。最初の課題で描いた燃えるような桜並木も自分以上に表現できる学生はいないと思っていた。彼の作品を見るまでは(「しあわせのこみち」)。文庫書下ろし一編を含む扉の開く瞬間を描いた、五編の短編集。
内容(「BOOK」データベースより)
時々、人と自分との間に、『ズレ』を感じることはありませんか。
みんなはこう思っているけど、自分は違うとか思ったことはありませんか。
この小説に出てくる清水あやめは、何でもできてしまうから、いつも他人とのズレや孤独を感じています。
それをなくそうと、優れた人が集まっている優秀な大学に行くんですが、その中でも少しズレを感じているんですよ。
答えのない現実に悩み、孤独の世界に浸っているんです。
でも、そんな彼女の前に一人の男が現れます。
彼女はどのような答えを導くのか、
何を知ることができるのか。
読んでいると心のそこから温かくなる物語です。
それ以外に4編の物語も掲載されています。
この5編に出てくる人物は、他の作品に登場しています。
簡単に読む順番を紹介しますが、これが正解とは限りません。
ただ、この順番で読めば、より楽しく読めると思います。
冷たい校舎の時は止まる
↓
↓
光待つ場所へ
よければ読んで見てください。
今月中に辻村さんのおすすめ作品を紹介できたらなぁと思います。
それでは、また。
今、一人の少年が立ち上がる 『名前探しの放課後』 小説紹介
どうも、春太です。
好きな作家は誰ですかと聞かれたら、間違いなく辻村深月さんと答えます。
それぐらい辻村さんの作品が好きです。
登場人物一人一人に魅力があって、
それぞれ強い信念を持っています。
そんな彼らが、辻村さんの他の作品に出て来たりとすると、
また彼らに会うことができたと嬉しくなります。
読めば読むほど、作品の奥深さを堪能することができます。
今日はそんな作品の中の一つ、『名前探しの放課後』。
依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。「俺、もしかして過去に戻された?」動揺する中で浮かぶ一つの記憶。いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」二人はその「誰か」を探し始める。
内容(「BOOK」データベースより)
坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」二人はXデーを回避できるのか。
内容(「BOOK」データベースより)
今回は、あらすじ以外なにも知らない状態で読んでほしいので内容については触れません。
読んだ後の爽快感、そして辻村さんの文章力の凄さに脱帽すると思います。
補足ですが、ぼくのメジャースプーンという本を読んでから読むとより楽しめると思います。
それでは、また。