読書の春

心に伝わる本、紹介しています。あと、読書に関する雑談などもしていきます。

自分の居場所を見つけるのは難しいけれど『凍りのくじら』

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悲しい別れをしたり、自分の非力さを感じたり、周りの人とうまくいかなかったりするととても息苦しくなるときがある。息苦しくなると、冷静に周りを見ることができなくなり自分の居場所がわからなくなることがある。

 

こんな感覚は自分だけでなく、誰でも生きていれば何度も出くわすだろう。時間が過ぎるのを待つとか、自分の中で折り合いをつけることで立ち直ることができることもある。でも、いつもそうやって解決できるとはかぎらない。そんなとき、どうやればうまくいくだろうか。楽しいことを考えたり、他のことに集中することもひとつの手かもしれないけれども、やはりそれだけではダメなときはダメだと思う。自分以外の人やものに助けもらう必要がある。家族や恋人や友達やいろいろな人に。

 

そう、辻村深月さんの凍りのくじらは、そういう人の心に光をあててくれる作品だと私は思う。この作品の主人公は様々な辛いことを経験してしまったことで、自分の居場所がわからなくなってしまったのだ。暗い闇の中から少しずつ出て行き、光を照らすことのできる人に成長していく。読み始めは少し暗い印象を受けるかもしれないが、読み進めていくと次第に暖かな気持ちになる。

 

もしかしたら、あなたも暖かな光をもらえるかもしれない。