森絵都『架空の球を追う』 小説紹介
森絵都さんの作品、『架空に球を追う」。
何気ない言葉に傷ついたり、理想と現実のギャップに嫌気がさしたり、いきなり頭をもたげてくる過剰な自意識にとまどったり…。生きているかぎり面倒は起こるのだけれど、それも案外わるくないと思える瞬間がある。ふとした光景から“静かな苦笑いのひととき”を抽出した、読むとちょっと元気になる小説集。
内容(「BOOK」データベースより)
小説のジャンルで何が好きですかと聞かれたら、
あなたはどのジャンルを答えますか。
たいていは恋愛や推理、友情など大きなテーマを答えるだろう。
誰も苦笑いしてしまう物語が好きと答える人はいない。
まず、苦笑いというワード自体、選択肢にないと思う。
そんなことを言っているが、
今後、私が質問された時、選択肢に苦笑いというワードが出てくるだろう。
そんなマイナス的で、微妙な物語が好きなのかと思うことだろう。
もっと感動するもののほうがいいに決まっている、と。
案外、悪くないのだ。
苦笑いしてしまう物語は。
今回紹介する作品、森絵都さんの『架空の球を追う』という作品は、
苦笑いをしてしまう物語。
思いもかけない出来事に巻き込まれたり、
考えたくもないことを考えさせられたり、
誰しもが苦笑いしてしまう場面。
思い通りにならないし、
嫌な気持ちになってしまうし、
落ち込んでしまう。
でも、それだけではないのだ。
嫌なことともに、
思い出せなかったことを思い出したり、
素敵な出来事にめぐり合うことがあるのだ。
マイナスの場面の中にも存在する『案外わるくない』を発見することができる。
普段、私たちが抱いているイメージにも、
違う一面が含まれているのだ。
そういう風な考えを教えてくれる短篇集です。
苦笑いをテーマにした小説、是非読んでみてください。
そのような場面に出くわしたとき、二重の意味で苦笑いしてしまうかもしれません。
それではまた。