絶望 『昨夜のカレー、明日のパン』 小説紹介
絶望。
深い絶望に会ったとき、他人からのはげましの言葉なんて意味がない。
『全てを捨てるのはまだ早い』
『命を簡単に捨てるな』
他人からそんな言葉をかけられても意味がないかもしれない。
当事者の気持ちを理解することは難しい。
『あなたに自分の悲しみがわかるのか』
その通りだ。
他人に全てを理解してもらうことは不可能だ。
時間が解決してくれるとよく聞くが、半分正解で半分不正解だと思う。
ただ何もしていないで過ごしていては意味がないのだ。
少しずつ、そして一歩ずつ日常に、小さな喜びを見つけなければならない。
マイナスの感情に少しの喜びを加えていく。
それが積み重ねられたとき、前を向くことができるのだと思う。
こんなことを偉そうに書いている私であるが、
私自身まだ深い悲しみを体験したことはない。
本当の意味では理解することはできないし、
私の想像よりもずっと深いものだと思う。
そんな時どうすればいいいだろうか。
もし、私の周りの人が遭遇したとき、
私自身が経験してきた小さな喜びを与えたい。
ありふれた言葉をかけるのではなく、その人の半歩先を歩き、
小さな喜びをばらまいていきたい。
だけれど、小さな喜びを見つけるのは意外に難しい。
今を生きるのに必死すぎて、違う視点で物事を捉えることができない。
そんな私たちのために本はあるのかもしれない。
小さな喜びが詰まった物語を体験する。
娯楽として、そして今後、訪れるかもしれない悲しみを受け入れるために。
何が言いたいかというと、
少しのスパイスで日常は色鮮やかになるし、
そのスパイスが何かを知っていれば、
どうしようもない現実もなんとかなるかもしれないということです。
そのスパイスの一つが、本であると私は信じています。
『昨夜のカレー、昨日のパン』からたくさんスパイスをもらえると思います。
老若男女、全ての人におすすめです。
ページ数は、280ページぐらいなので読みやすいです。
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。
(内容『BOOK』データベースより)