きっと、紙の本もなくならない 『活版印刷三日月堂』 小説紹介
あらかじめ鉛や木で文字の形を作っておく。
その文字に塗料を塗り、紙に印刷する。
現代の便利さを体験している私たちにとっては、ものすごく手間がかかるものだと感じるだろう。
活字はデジタル化され、文字は実物ではなく、データ化された。
日進月歩、どうしたら効率よくできるかを求めた結果、
活版印刷はほぼ絶滅しかけている。
そんな活版印刷が再注目されているのだ。
大量印刷ができた活版印刷ではなく、
文字一つ一つに思いを込めることができる温かみのある方法としてだ。
活版印刷の特徴は、一つ一つ活字の重さで、紙に独特のくぼみができるらしい。
そのくぼみを生かして、ユニークな年賀状・名刺などを作ることができる。
大量印刷ができるという一時代を築いてきた活版印刷の役目は終わったのかもしれない。
だけれど、自分の思いを形にして伝えることができるという点で、活版印刷は新たな役割を得たのだろう。
活版印刷をはじめとする昔からある技術は、どんどん最先端というものに押しつぶされている。
でも、それだけではない。
その役割を終えても、誰かが違う役割を必要としている限り、新しく生まれ変わり、私たちの日常にあり続けるのだ。
今日、紹介する『活版印刷三日月堂』という小説は、活版印刷の良さを多くの人に知ってもらおうと奮闘する女性の物語。
簡単で便利であることが全てでない。
手間がかかるからこそ、思い入れがあり、
気持ちを込めることができる。
この本を読んだ後、懸念していたことが何処かに消えてしまった。
紙の本はいつか消えるのだろうか。
ここ最近、Kindleなど様々な形で本がデジタル化されている。
置く場所を考える必要がないし、
ネットにさえ繋がっていればどこからでも購入することができるし、
コスパフォーマンスもかなりいいし、
電子書籍の良い点をあげろと言われれば、たくさんあげることはできる。
でも、いまなら、自信を持って言える。
紙の本はなくならない。
わくわくしながら本屋に行ったり、
たくさんの本の置き場所に困ったり、
言葉の詰まった紙を手で感じることができたり、
そのすべてが好きなのだ。
私は紙の本を必要としている。
私以外にもたくさんの人が必要しているだろう。
誰かが、求め続ける限り大丈夫である。
そんな風に思わせてくれた本。
是非、読んでみてください。
あと、右が一巻で左が二巻です。
最近、一段と寒くなりましたね。
私の住んでいるところは、また雪が降りそうです。
それでは、また。